モビールと重力の感覚

モビールという空中に吊るおもちゃがある。これは、もともとアート作品だった。
アレクサンダー=カルダーという人が考え出したものだ。
私はこれをとても気に入っている。これが頭上にあると心が安らぐ。お気に入りのモビール以外にも、いくつも部屋に吊って飾っている。

重力の感覚というのは重要で、電車に乗るとこれが乱れるのが不可思議な体感をつくりだす。飛行機に乗ればさらに乱れる。浮揚感や加速度の変化する感じ、慣性力。三半規管を中心にして心が揺れ動く。
重力と恩寵」という本では、有体に言えば「地球の重力に魂を縛られたものどもに恩寵を与えよ」的なことが述べられているのだが、モビールというのはそこで述べられる恩寵を具現化したものだと思う。

子どもの頃にはカモメのモビールをつくったことがある。その頃はまだ具象図形が好きだったのか。羽ばたくタイプのモビールだった。
この夏は泳ぎに行っていない。浮いていない。
ヘリウム風船も手に入れていない。

視覚を重力感覚へと変換する喜びをモビールは教えてくれる。