モノポリー

「モノポリーにものすごく強くなる本」原稿
日本モノポリー協会

モノポリーというゲームには、戦前の資本主義が詰まっている。
独占を目指し、不動産を買い占めて、地上げをしていくというボードゲームである。六人ほどでボードの中をグルグル回って、土地を買って、建物を建てて、私有地に止まったら料金を払うというゲームである。「いただきストリート」や「タワードリーム」の元ネタである。
上記のようなテレビゲームと違い交渉が勝負となるのが、ボードゲームのすばらしさである。

ルール設定は外枠だけ決まっていて、交渉による契約はプレイヤーによるというのが、面白い部分である。
テレビゲームモノポリーや競技モノポリーだと割と厳格にルールが決まっているのだが、普通に遊ぶ分には、ボードに関する部分や銀行以外はプレイヤーが決めていいため、プレイヤーがハイレベルだとすごい勝負になる。
契約によるルールの発生・制度の構築・信頼と裏切りが楽しめる。

中盤の戦略的提携:土地所有者たちが集まって戦略的提携を行い、どこか一列をホテル街にして、他の人たちが止まりやすくして、他の人を破産に追い込む。破産しそうなプレイヤーが最後に止まる前には、止まる確率に基づいて破産者の資産の分配を相談する。破産しそうな人の横で、資産分配について交渉しているのを見るのは、なかなかおもしろい。
不動産の証券化:現金がないけど土地を抵当にいれたくないときに、土地から上がる収益を何回分か何周分か分配する契約を結ぶ。
バルチャーファンドの設立:破産者に融資して生きながらえさせて利用する。契約条件を整えて、破産プレイヤーに逆転のチャンスがあることが大切である。(破産させると家やホテルを取り壊すので、資産が減価するから)
オプション取引全般:金融派生商品をつくって売るやつが出てくる。ノートPCを片手に計算するとかすれば高度なものも可能なのではないか。
最終局面での裏切り:最後の一人になって独占を築くまでプレイするため、最後は協力してきた相手をいつ裏切るかがポイントとなる。リアル繰り返し型囚人のジレンマ状況である。契約による借金を踏み倒すやつが出てくることも理論的にはありうる(銀行はお金の貸し出しをしないため、契約により貸し出しを行うやつが出てくる。銀行への金はルールにより踏み倒せないが、ゲーム内契約は当事者間のことなので踏み倒せる。民事不介入だし。裁判所ないし)

まあ、だいたい面倒くさいので、オプション取引とかはしないのだけれども、戦略的提携は割とよくある。ビジネスマン同士で行うのが楽しいと思う。そうでないと、高度な交渉にならないからね。でも、残虐非道な資本のプレイの応酬を楽しめる人同士でやらないと、争いになるので注意。
確率に基づいた意思決定・インフレ率の計算・創造的交渉。ハイレベルだと楽しい。いや、むしろ、そうでない不確実性が多い方が楽しいのか。オプション取引とか、予めの分配交渉とか、保険とか、そういう金融商品はない方が楽しい気もする。
でも、まあ、モノポリー金融派生商品をつくるプレイを見たときは衝撃的だった。「未来の約束」の販売によって、不確実性が減少してそれがプレイの強さに結びつくのを見ていると金融工学の力を確かに感じる。

資本の論理と独占がよくわかるゲームである。経営と交渉の学習に最適。場合によっては金融工学も学習できてしまう。
まあ、普通に楽しいんだけどさ。